希少価値で珍重される
ピーベリー(丸豆)
「ピーベリー」という豆をご存知でしょうか。ピーベリーという言葉に出会ったのは、俳優の山村 聰(やまむら そう)さんが書いたものを読んだときでした。
トヨタ クラウンなどのCMにも出演していた山村 聰さんは、コーヒーには特別な執着があった人でした。
一時期、自らも銀座で喫茶店を経営していたことがあったほどです。本格的なコーヒーを飲ませる店だったようで、その顛末記が山村聰さんの著書「釣りひとり」には、ヘラブナ釣りなどの釣り関係の話とともに書かれています。
山村 聰さんはもちろん俳優としてはよく知られていますが、文章も一流で「釣りひとり」などは、絶版になってしまったのがほんとうに惜しい気がします。少し長いですが「釣りひとり」から、山村 聰さんが珈琲にこだわった部分を引用してみたいと思います。
名著「釣りひとり」から
「珈琲については、私は、若い頃から信念を持っていた。それだけに、私の信ずる、ほんとうに美味しい珈琲を、安く提供しようと考えた。
珈琲は胃に悪いという通念がある。また、真黒な濃い珈琲が流行である。私は、この誤りを、二つとも解決したかった。豆の焙煎と、出し方に問題があるのである。
簡単に言えば、煮沸が悪いのであって、紅茶式の、あっさりしたドリップ方式ならば、十分に、有害物質の抽出を抑えることが可能で、胃をやられる心配は、まずない。また、黒焙りの豆は、容易に濃い珈琲を作るが、炭化物の苦味が珈琲本来の苦さを不純なものにしてしまう。
珈琲は常識的には、一人前三匁とされ、一ポンドにつき、カップ四十杯どりである。しかし、収益を上げるためには、五十カップ以上もとるところが少なくない。
ところが、日本では濃い珈琲に人気のあるところから、豆は、黒焙りと相場が決まっている。つまり、少しの材料で、濃い珈琲を沢山得られるからである。煮沸しない店でも、ドリップで淹れるためには、やはり黒焙りの方が容易でもあるし、利率がよい。
ドリップ方式が最良の淹れ方であることは、今や誰知らぬもののない常識であるが、この方式を最も純粋に推し進めていくと、紅茶式の、あっさりしたドリップに行きつく。そのためには、原料をたっぷり使わなければならない。
私の自宅では一カップ六匁ほども使うことにしている。豆は浅焙りが最もよい。
以上のことから、私はバーテンダーに、一人四匁、一ポンド三十杯どりを厳命し、珈琲の問屋には、しつこく、浅焙りを注文した。しかも、値段は破格の五十円と決めた。」(以上、「釣りひとり ポイントの顛末」からの引用)
山村 聰さんの珈琲に対する考え方がよくわかると思いますが、いかがでしょうか。
一匁は3.75グラムですから、1杯当たりは約15グラムになります。現在でも1杯当たり10グラム前後が多いので、やはりかなり贅沢なコーヒー豆の使い方だったと言えそうです。
その後、他の文章を読んでいると、山村 聰さんは自宅では「ピーベリー」を好んで愛飲していたと書かれていました。
当時、珈琲の知識が一般的にどの程度知られていたかはわかりませんが、ピーベリーに注目する山村 聰さんはやはり、珈琲のことをよく知っていて、さらに相当なハイカラさんだったようですね。
ピーベリーは、通常コーヒーの実に2粒入っている実が1粒しか入っていない豆の事(例外もあります)で、風味が豊かで豆の丸さが均一の焙煎に有利とされています。
豆の種類のことではないので、コロンビアのピーベリーやブルーマウンテンのピーベリーといった豆が存在します。1本の木から5-10%程度の収穫量なので、その希少性も、珈琲好きの間では好まれています。
もともと枝の先に出来る事が多いピーベリーですが、生産者によってはピーベリーだけを選別して出荷するところもあるようです。
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