アイリッシュコーヒー

アイリッシュコーヒーのルーツに興味を持つと、1930年から1940年頃のアイルランド南西部の港町、フォインズ(Foynes)にたどり着きます。

ガヤガヤと賑わうフォインズの街。アメリカから大西洋を超え、ヨーロッパへ向かうための大型飛行艇の中継地として栄えていました。客室内の気密性が低い飛行艇での、18時間の長旅で乗客たちの身体はすっかり冷え切っていました。

飛行艇からボートでエアポートレストランに急ぐ人々は、シェフのジョー・シェリダンが考案した素敵に身体の温まる飲み物と出会いました。

「これはブラジルのコーヒーですか」と聞くと「いいえ、アイルランドのコーヒーです」と答えが返ってきました。これがアイリッシュ・コーヒーの始まりでした。

武蔵野珈琲店のアイリッシュコーヒー。シンプルです

世界のアイリッシュコーヒー

熱い濃い珈琲に、アイリッシュウイスキーと砂糖を入れ、ホイップクリームを上に乗せただけなのに、なぜか美味しいのがアイリッシュコーヒーです。

マスターが世界のカフェを探訪した際に飲んできた各地のアイリッシュコーヒーを紹介します。なお、当時のデジカメの性能が低く、画像の乱れた映像もあります。けっして、マスターの写真がヘタなわけではありません。(笑)

ウインナコーヒーなどよりも、世界共通のメニューです。香港、ロンドン、シンガポール、イタリア、フランス、ウイーンなどで、それぞれアイリッシュコーヒーを飲んでみましたが、微妙に味に違いこそあれ、どれもまさしくアイリッシュコーヒーでした。

カフェで飲むアイリッシュコーヒーに比べ、バーでカクテルメニューとして飲むアイリッシュコーヒーのほうがアルコールが強めの場合が多い気がします。

ウィーンの「カフェ・ムゼウム」のアイリッシュコーヒー。ウィーンのカフェでは、水が日本と同じように無料でサービスされてきます。「カフェ・ムゼウム」の店内の内装は2003年に、建築当時のオリジナルの状態に復元されました
ローマの有名な「カフェ・グレコ」のアイリッシュコーヒー。左側に見える伝票の価格はナッツ付きで11ユーロでした
南フランスのニースの普通のカフェのアイリッシュコーヒー。熱いのになぜかストローが付いて出てきました
ローマのナヴォーナ広場に面したタルトゥーフォ(トリュフ)と呼ばれるジェラートで知られる「トレ・スカリーニ」のアイリッシュコーヒー。クリームの上にエスプレッソの粉がアレンジされていました
ブタペストの最高級レストラン「グンデル」(Gundel)のアイリッシュコーヒー。角砂糖の白とブラウン、パウダーシュガー、ダイエットシュガーが添えられて出てきました。残念ながら、飲んでいる途中で気が付いて撮った写真です

武蔵野珈琲店のアイリッシュコーヒー

武蔵野珈琲店のアイリッシュコーヒーは、ホイップクリームの白い部分と珈琲の境目がくっきりしています。

もちろんマスターのオリジナル。アイリッシュコーヒーのポイントは、必ず甘さに特徴のあるアイリッシュウイスキーを使うことです。他のウイスキーを使うと別の飲み物になってしまいます。

日本で手に入りやすいアイリッシュウイスキーは、タラモア・デュー、ジョン・ジェムソン、ブッシュ・ミルの3種類です。

武蔵野珈琲店では1608年にジェームズ1世から免許を授かった最古の公認蒸留所とされているオールド・ブッシュミルズの「ブッシュ・ミル」を使用しています。

ウイスキーとしても、コーヒーに合わせた場合を考えても、いまのところベストの選択だと思います。

武蔵野珈琲店で使用している、アイリッシュウイスキー「ブッシュ・ミルズ」

淹れるところも見逃せないアイリッシュコーヒー

アイリッシュコーヒーを注文したら、淹れるシーンにも注目です。

武蔵野珈琲店では、香りをつけるためにほんの少し、オレンジの皮を薄く切ってアイリッシュウイスキーに入れます。

そして、火をつけてカップに注ぎます。この火をつける意味は、オレンジの皮にあるオイル分を飛ばしてしまうのが目的です。

少し上から垂らすアイリッシュコーヒーに青白い炎が出てとてもキレイです。そして、ウイスキーに負けない濃い目のコーヒーを注ぎ、上にホイップクリームを乗せれば出来上がりです。

さっと青白い炎があがり、それがカップに注がれていきます。武蔵野珈琲店ならではのアイリッシュコーヒーです。見た目も優雅ですが、味わいも格別です。ぜひ、カウンターに座って注文してみてください

世界中のいろいろなところで飲んだアイリッシュコーヒーにも負けない味だと自負しています。

アイリッシュコーヒーを淹れていると、ローマの有名なカフェでアイリッシュコーヒーを頼んだときに、雨が降っていて寒かったせいか、ボーイに「ナイスオーダー」といわれたのを思い出します。